BSアロー考察
ゴツメアローの亡霊を引きずっていけ
エースバーンより速くて物理に強いポケモン…そう、ファイアローじゃな!
今回は、物理受け(の補助)を意識したファイアローを考察していこうと思う。
物理受けアローと言えば第6世代で活躍していたゴツメアローを連想する方が多いだろう。あの型が活躍していた理由としては、高い素早さと特性「はやてのつばさ」が挙げられ、技「はねやすめ」や「おにび」を上から使うことで耐久を維持できたことが大きいだろう。また、ファイアローはその他のアタッカー型との判別が行動し始めるまで確定的に明らかにならず、更には、Zワザやダイマックス技のような非接触高火力技が、今ほど流行っていなかったことも追い風となって、非常に環境に合った性能をしていたというのも、流行の原因だったと言えよう。
さて、では第8世代のダイマックス環境でファイアローを物理受けの補助を重視する型で用いることに、どのような意義があるのかということから、以下に述べていこうと思う。
①採用理由
「『おにび』を使えるポケモン」且つ「エースバーンに弱点をつかれない」に当てはまるポケモンの中では、素早さ種族値が最も高い。
…現在ガラル地方において解禁されているポケモンのうち、「おにび」を覚えられるポケモンを、素早さ種族値の高い順に並べると以下のようになる。
142:ドラパルト
135:ガラルヒヒダルマ(ダルマモード)
130:ミュウツー
126:ファイアロー
125:マーシャドー
117:エンニュート
ドラパルトは悪タイプの技によってエースバーンの弱点を突かれてしまい、ヒヒダルマはダルマモードになってから受けを行うのが現実的とは言えない。ミュウツーはランクマッチでは使用できないポケモンであるため、上記の条件を満たすポケモンはファイアローになる。尚、マーシャドーはランクマッチで使用できず、エンニュートではエースバーンに抜かれてしまうため、速さを求めればファイアロー以外の選択肢は無くなる。(ただし、ドラパルトは耐久振りしてダイマックスすることでエースバーンの「ダイアーク」を耐えられるため、単純にエースバーンに有利なポケモンを採用しようとすればドラパルトも十分に候補に挙がる。)
「速さを求めずとも受けが成立し『おにび』を覚えられるポケモンを採用すればいいのでは?」という疑問があるのは尤もだが、現環境で物理アタッカーのポケモンは頗る多いため、比較的消耗しがちになることが多いのも事実であり、そうである以上「上から回復」や「上から火力カット」が行える点は十分に採用理由たり得るように思う。また、タイプについて言えば、エースバーン相手に限らず、悪タイプで弱点をつかれない点は対ゴリランダーなどにも活きると言える。尤も、肝心のエースバーンについては「タイプの変わったエースバーンと対面出来たら『おにび』が刺さって美味いよ」くらいのものなので、あくまで「エースバーン対策として」の採用ではなく、汎用的な「物理受け(の補助)」として捉えて欲しいところではあるが……。
以上、素早さとタイプの個性をもって採用理由とする。
②努力値・立ち回り
採用理由に足る素早さを確保したうえで、できるだけ物理耐久に振りたいため、努力値は以下のようになる。
性格:おくびょう
努力値:44-0-252-0-0-212
実数値:159-*-123-94-89-190
技:おにび・はねやすめ・オーバーヒート・ニトロチャージ
特性:ほのおのからだ
持ち物:あつぞこブーツorゴツゴツメットorたべのこし
・最速エースバーン抜き
・防御ぶっぱ(物理耐久指数を重視するためHPではなく防御)
・余りHP(そのまま余りを振ると偶数になるため、8だけ素早さに上乗せ)
基本的には、物理相手に上から「おにび」を使い、火力を削って「はねやすめ」で耐え続ける。火傷のみでの突破には時間がかかりすぎるため、「オーバーヒート」で削り足しを図る。6世代のゴツメアローと異なり、そのまま受け切って突破しようとする型というより、火力とHPを削ってから後続を繰り出していく「物理受け(の補助)」型(クッションに近い?)であることや、ダイマックス技に対して「ゴツゴツメット」のメリットが無いことを踏まえ、持ち物はどちらかというと「ステルスロック」対策に「あつぞこブーツ」を推奨する。覚えている飛行技が「はねやすめ」のみであるため、HP満タンのときにのみ発動する「はやてのつばさ」にメリットが無いので、特性は「ほのおのからだ」でよい。
「ニトロチャージ」の採用理由としては、「ダイジェット」を使用して素早さを積んだエースバーンにある程度素早さで対抗するためである。使う機会は他3つと比べて圧倒的に少ないが、相手の見せた隙に上手く合わせられると安定感が頗る増す。
「リベロ」でタイプが変わったエースバーンには「おにび」が効くため、ダイマックスを枯らすことも期待して火傷を狙うため、エースバーン以上の素早さは確保したい。
本記事はポケ徹育成論ではないので、上のようなざっくりした役割の説明のみにとどめておく。
尚、「たべのこし」採用なら60-0-244-0-0-204振りのほうが効率が良い。
ダイホロウを許すな
③ダメ計
受け側はすべて上で述べた型のファイアローとする。火傷込みの数値ではないが、単純に2分の1で計算すればおおよその数字は出せるため、割愛する。
A特化ゴリランダー(こだわりハチマキ)の「はたきおとす」
36.4~43.3%⇒持ち物ありでも火傷込みで余裕で受かる。
A特化ドラパルトの「ドラゴンアロー」
54.0~65.4%⇒「ラムのみ」じゃなければ火傷込みで受かる。積む前に後続に任せたい。
A252エースバーン(いのちのたま)(リベロ)の「ダイジェット」
83.6~98.1%⇒火傷込みで二発受かるので、2ターン目には「ニトロチャージ」が堅い。
A252ミミッキュ(いのちのたま)の「シャドークロー」
37.7~45.2%⇒火傷込みで「かげうち」も怖くなくなる。
A252連撃ウーラオスの「すいりゅうれんだ」
83.0~101.8%⇒火傷込みでほぼ受け切れる。ダイマされたら「おにび」後に退く。
A252一撃ウーラオスの「あんこくきょうだ」
42.1~50.9%⇒火傷込みで余裕あり。構成如何でダイマされても枯らしにかかれるか。
*本記事はあくまで筆者の見解を示したものであり、ランクバトルにおける今後の展望を予言したり、対戦における実績を保証したりするものではありません。
エースバーン対策例:バルジーナ
もう受け出しから絶対勝つのは諦めた。
バルジーナについて
色々と質問箱などを経由して議論・考察を重ねた結果、「リベロ」のエースバーンの対策案(受け要員)として最終的に残ったのはカバルドンとバルジーナであった。
今の環境では、正直言ってこの二体でも受け出しからだと相手の技選択次第で押し切られるので、受け出しから勝ち確のポケモンを探すのはDLCが解禁されてからいいのではないか、などという空気が流れつつある昨今であるが…「精一杯足掻いてみよう」というのがプレイヤーに許された唯一の活路であるのだから仕方あるまい。
さて、御託が終わったところで今回主題とするバルジーナについて話していこう。
バルジーナのステータスは以下の通りである。
タイプ:あく・ひこう
種族値:110-65-105-55-95-80
特性:はとむね・ぼうじん・くだけるよろい
一目見てはっきりと「物理受け特化」のポケモンであることが分かる。
現環境では唯一「どくどく」「はねやすめ」を両立できる種族である。尚、進化前のバルチャイについては、「しんかのきせき」を持たせてもバルジーナのほうが耐久指数や回復ソースなど勝る点が多いため、今回は考察対象外となる。
このポケモンを用いてエースバーンを対策する際のコンセプトは
「てっぺき」と「はねやすめ」で受けを維持しつつ「どくどく」でダメージを稼ぐ
というものである。まずは対面から受けが成立するかを見ていこう。
性格補正なしA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「かえんボール」
…性格補正ありH252B252振りバルジーナに40.0~47.4%
性格補正なしA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「ダイバーン(140)」
…性格補正ありH252B252振りバルジーナに46.5~55.7%(晴れ:70.5~83.4%)
⇒「通常時のダイバーン」+「晴れB2段階上昇時のダイバーン」は耐えきれる
B特化であれば、想定しうる限りのエースバーンの火力について、基本的に対面からの受けは成り立ち、急所に喰らわない限りは「てっぺき→はねやすめ」でこちらのパターンに入ることが可能であると言える。ダイマックスターンをほぼ凌げる点からも採用理由としてはかなり有力であるように思う。
エースバーンに性格補正が加算される可能性などを考慮すると、基本的にバルジーナはHB特化の振り方をすることになるだろう。
育成案
以上の内容を踏まえ、本記事が推奨する育成案は以下のようになる。
性格:ずぶとい(「とんぼがえり」を採用するなら「わんぱく」も可)
努力値:H252 B252 S4振り
持ち物:たべのこし
技構成(確定):どくどく・てっぺき・はねやすめ
技構成(選択):イカサマ / とんぼがえり / ふきとばし
特性:はとむねorぼうじん
前述した理由から努力値配分はHBに特化とし、ダメージソースの「どくどく」、耐久強化の「てっぺき」、回復ソースの「はねやすめ」は確定と言ってよいだろう。また、性格補正のあるエースバーンを、より安定した形で受けられるように、持ち物は「たべのこし」が良いだろう。そもそもダイマックス技が非接触であるため「ゴツゴツメット」などはイマイチ活かしきれない。
選択技としては、いわゆる詰み・起点化を回避するための「イカサマ」「とんぼがえり」「ふきとばし」が挙げられる。これらの中の優先順位は記載順と考えてよいだろう。「ふきとばし」を採用するとノーウェポンになり、「ちょうはつ」や「マジックミラー」などの条件下で詰む点に注意が必要となる。「みがわり」や「ビルドアップ」を積んだエースバーンを意識するなら、お互いが積み切って尚対等に粘り合えるよう「イカサマ」の採用が堅いだろう。
特性については、「ダイホロウ」などで防御を下げられるのを防ぐため「はとむね」か、あるいは一部のスリップダメージを防ぐために「ぼうじん」を採用するのが妥当だろう。
基本的な立ち回りは他の物理受け型と同様で、受けが効く相手に繰り出して「てっぺき」と「はねやすめ」で受けを維持しつつ「どくどく」でダメージを稼いでいく。勝てない相手には残りひと枠に対しては素直に撤退するか「ふきとばし」で交代させるなどする。
ダメージ計算一覧
細かい部分はどうせ読み飛ばされているだろうし、たぶんこの記事をここまで眺めた方々が一番欲しいものを載せて、本記事を締めくくろうと思う。いずれも受け側は性格補正ありH252B252振りバルジーナを想定する。追記希望についてはコメントまで。
性格補正なしA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「かえんボール」
…40.0~47.4%(B2段階上昇時:19.8~23.9%)
性格補正なしA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「ダイバーン(140)」
…46.5~55.7%(B2段階上昇:23.9~28.5%)(晴れ・B2段階上昇時:35.9~43.4%)
性格補正ありA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「かえんボール」
…43.7~52.0%(B2段階上昇時:22.1~27.1%)
性格補正ありA252振りエースバーン(リベロ・いのちのたま)の「ダイバーン(140)」
…50.2~59.9%(B2段階上昇時:25.3~30.4%)(晴れ・B2段階上昇時:38.2~45.6%)
性格補正なしA252振りミミッキュ(いのちのたま)の「じゃれつく」
…50.2~61.2%(B2段階上昇時:26.2~32.2%)
性格補正なしA252振りドラパルト(こだわりハチマキ)の「ドラゴンアロー」
…39.6~47.9%(B2段階上昇時:20.2~24.8%)
性格補正ありA252振りガラルヒヒダルマ(ごりむちゅう)の「つららおとし」
…74.6~88.4%(B2段階上昇時:38.7~45.1%)
…22.1~26.2%(B2段階上昇時:11.5~13.8%)
…61.7~74.6%(はねやすめ時:30.8~37.3%)
(B2段階上昇時:31.3~38.7%)(はねやすめ・B2段階上昇時:15.6~19.3%)
性格補正ありA252振りカビゴンの「ばかぢから」
…21.6~25.8%(はねやすめ時:43.3~51.6%)
(B二段階上昇時:11.0~13.3%)(はねやすめ・B2段階上昇時:22.1~26.7%)
性格補正なしA252振りウオノラゴン(がんじょうあご)の「エラがみ(先制)」
…54.3~64.9%(B2段階上昇時:27.6~33.1%)
性格補正なしA252振りパッチラゴン(はりきり)の「でんげきクチバシ(先制)」
…117.0~139.1%(B2段階上昇時:58.9~70.0%)
流石にパッチラゴンやヒヒダルマのような「等倍以上絶対穀すマン」は受けきれないが、それ以下の火力であれば「たべのこし」込みで対面からならほぼ受かると言える。
*本記事はあくまで筆者の見解を示したものであり、ランクバトルにおける今後の展開を予言したり、対戦における実績を保証するものではありません。
*【6月12日12時】Twitterにて意見を頂いて選択技の優先順位等について追記・修正を行いました。
エースバーンの対策について
6月5日深夜、エースバーンがシングルバトル使用率1位となった。
「ズキュントス」をごぼう抜きしての1位の経緯
剣盾のランクマッチでは、「ドリュウズ・ミミッキュ・カビゴン・ドラパルト・トゲキッス」の5体からなる、環境使用率上位5体を連ねた構築「ズキュントス」が、いわゆる結論パとして扱われていた。しかし、6月2日にエースバーンの新特性「リベロ」が解禁されると、破竹の勢いで使用率を伸ばし、6月5日深夜、日付が変わる頃にはシングルバトルでの使用率は「ズキュントス」を追い抜いて1位に達した。
「リベロ」のエースバーンの強さについては、本ブログの前記事
【解禁】新特性「リベロ」エースバーン考察 - よくある雑記帳
でも述べた通りであり、「どうあがいても強特性」であるこのポケモンが使用率上位に位置すること自体は、さほど驚くことではないが、よもやこうもあっさりと「ズキュントス」を上回るとは思っていないかったプレイヤーも多く、ツイッター上では動揺の声が上がり、同時に「コイツどうやって対策するんだ」という考察が盛んに行われるようになった。
エースバーン対策になるポケモン
では、実際にランクマッチでエースバーンと対峙する上で、どのようなポケモン・型を採用すれば、対策になりえるのか。以下にこの数日でみかけた意見をまとめた。
⑴カバルドン
地面タイプの単タイプでありエースバーンに弱点を突かれず、また、物理耐久が非常に高いため、エースバーンの攻撃を受けて耐えた上で、「あくび+ふきとばし」や「砂嵐+ステルスロック」で、流したり削ったりすることができる。「ふきとばし」はダイマックスポケモンには無効であり、初手ダイマックスを切られることが珍しくないエースバーン相手には注意が必要だが、「あくび」で眠らせるあるいは交代を強いることで、ダイマックス対策を行うことも可能である。
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)の「かえんボール」
…B特化カバルドンに36.7~44.1%
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)の「ダイバーン(140)」
…B特化カバルドンに43.7~51.6%(晴れ補正込みで65.1~76.7%)
上記のダメージ計算結果から、「オボンのみ」並みの回復ソースがあれば2連ダイバーン程度までであれば耐える可能性があることがわかる。
⑵ウオノラゴン
水・ドラゴンタイプの高火力アタッカーであり、「エラがみ」を先制で使うことができれば、ダイマックス中のエースバーンであっても、晴れていなければ確定1発で倒すことが可能になる。準速で「こだわりスカーフ」を持つことで最速エースバーン抜き+1の素早さを得ることができるので、上から殴り倒す方針で対策するのであれば、かなりの適任であるといえる。
A特化ウオノラゴン(がんじょうあご)の「エラがみ(先制)」
…無振りエースバーン(炎タイプ)に276.1~326.4%
上記の通り、晴れや等倍であってもダイマックスされなければ確殺できるほどの火力で殴ることが可能である。
どうせ「エラがみ」が通らない相手にはあまり火力が期待できないポケモンなので、水の通る相手に圧力をかけつつ、脳筋にエースバーンを倒してしまうことをメインに動かしていくといいだろう。エースバーンに「ダイジェット」を使って素早さを積まれる前に対面させてしまいたいところである。
⑶ヒートロトム
炎・電気という優秀な複合タイプであり、エースバーンの攻撃をすべて等倍以下に抑えられるだけでなく、「相性的にエースバーンに炎技を選ばれない」ことから、「タイプが炎でなくなったエースバーンに『おにび』を使い、火傷状態にすることで物理火力を削ぎ、起点にしてしまう」という戦法がとれる。HP252振りだけでもエースバーンの「とびひざげり」程度は耐えるため、調整如何でかなり安定した立ち回りが可能になる。
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)の「とびひざげり」
…HP252振りヒートロトムに80.2~95.5%
また、「おにび」以外にも、「でんじは」や「トリック」など、相手を妨害する補助技が豊富であるため、火傷以外にも様々な手段で、対エースバーンに限らない幅広い起点づくりをこなせるポケモンと言える。ミトムでも可。
尚、シャンデラでも近い立ち回りができ、シャンデラであれば弱点である「ふいうち」を誘いながら変化技で犠牲無く起点化を狙ったり、相手の「とびひざげり」に合わせて受けだしすることで無償降臨+相手にダメージを狙うことができる点で有利である。一方でこちらは「ダイアーク」に弱いため注意が必要。
⑷ドサイドン
幸いなことにエースバーンは「くさむすび」をはじめとする草技を覚えることができないため、特性「ハードロック」を持つドサイドンを採用することで、最終的に殴り勝つことが可能である。エースバーンが変化できるタイプのうち、ドサイドンとの対面であまり使いたくないであろう飛行タイプを除けば、炎・格闘・エスパー・悪・電気など、地面の通りがとても良い(「とんぼがえり」は使われたら交代されることに加え、「ダイワーム」をドサイドンに敢えて使うことは少ないと思われるため除外)ことも魅力いとつ。
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)の「とびひざげり」
…HP252振りドサイドン(ハードロック)に73.8~86.9%
A特化ドサイドンの「ダイアース(130)」
…無振りエースバーン(地面等倍のタイプ)に105.1~124.5%
「じゃくてんほけん」による火力増強を踏まえれば、十分な殴り勝つ可能性があることがわかる。
⑸ミミッキュ
結局全部こいつでいい。「『ばけのかわ』による行動保証によって、『こうこうのしっぽ』を『トリック』で押し付けて起点化する・『トリックルーム』で相手の高い素早さをデメリットに仕立てる」といった妨害に加えて、「みちづれ」によって無理やり1:1交換に持ち込んだりできる。「みちづれ」はダイマックスしているポケモンには効果がないため、初手ダイマックスが珍しくないエースバーンを相手に使うときは注意が必要。「『こうこうのしっぽ』を押し付けて『みちづれ』」の戦法は、ミミッキュに限らずカラマネロなどほかのポケモンでも可能だが、やはり「ばけのかわ」による安定性が並外れている。
⑹ミロカロス
「ふしぎなうろこ」のミロカロスで、「くろいきり」などで相手の積みを妨害するなどの立ち回りが可能である。物理受けの定番となっていたアーマーガアやナットレイが炎技で焼かれてしまうので、エースバーンを意識するのであれば、こういった水タイプの物理受けが有効になる。
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)の「ダイジェット(130)」
…B特化ミロカロス(ふしぎなうろこ)に37.1~44.5%
「ダイナックル」で攻撃を積みながらゴリ押されると不安であるが、基本的には「じこさいせい」で回復が間に合うようなダメージになっている。
水タイプの物理受けとしては、「ちからをすいとる」を用いて火力を削ぎつつ回復して受けを成立させるブルンゲル等も挙げられる。
⑺サンダース
奇を衒った「対面起点作成型」のサンダースで、初手ダイマックスのエースバーンを徹底的に妨害することができる。臆病で100-0-236-0-0-172振りすることで、以下のような耐久を得るため、「オボンのみ」を持って上から「あまえる→あまえる→こらえる」といった動きで、エースバーンのダイマックスターンを枯らしながら、攻撃を4段階下げるといった働きが可能である。
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)のA2↓「ダイバーン(140)」
…HP100防御236振りサンダースに51.6~62.0%
性格補正なし攻撃252振りエースバーン(いのちのたま)のA4↓「ダイバーン(140)」
…HP100防御236振りサンダースに晴れ補正込みで51.6~62.0%
また、隙を見せれば「でんじは」により素早さも奪うことができるため、対面から流したり起点にしたりする上では、それなりの活躍も期待できるように思う。余った1枠には攻撃技として、「10まんボルト」などを採用するのが堅いか。
尚、似たような種族値のポケモンにパルスワンがいるが、同じ条件で調整を行う場合、パルスワンは上記の攻撃を確定耐えにできないのに対し、サンダースであれば確定耐えが実現するため、本記事ではサンダースを採用している。
備考:今回の記事ではエースバーン単体への対策の考察を扱ったため、エースバーンとよく一緒に採用されている水タイプやゴリランダーなどと併せての、構築単位での対策については触れていません。
*本記事はあくまで筆者の見解を示したものであり、ランクバトルにおける今後の展開を予言したり、対戦における実績を保証するものではありません。
【解禁】新特性「リベロ」エースバーン考察
6月2日夜、新特性「リベロ」を持つエースバーンが解禁された。
そもそも「リベロ」とは?
リベロ:自分が技を使うとき、攻撃・効果発動する前に、自分のタイプがその技のタイプに変化する。
類似する特性にゲッコウガやカクレオンなどが持つ特性である「へんげんじざい」があるが、基本的な効果は同じである。
「基本的にすべての技をタイプ一致で使うことができるため単純に火力が上がる」「タイプを変え続けることで相手の攻撃を受けやすくなる」などの、優秀な点の多い特性である。
第7世代(サン・ムーン)までの環境では実際に、ゲッコウガが「『くさむすび』によって草タイプになることで、『きのこのほうし』を無効化し、『きあいのタスキ』持ちのキノガッサに対して有利に立ち回る」といった活用をしていた。疑う余地のない強特性である。
エースバーンと「リベロ」
エースバーンの主なステータスは以下の通りである。
種族値:80-116-75-65-75-119
タイプ:ほのお
特性:もうか・リベロ
種族値を見て明らかであるように、典型的な物理アタッカー型ポケモンである。
この数値と特性を見て、以下のポケモンを連想したプレイヤーも多いだろう。
種族値:72-95-67-103-71-122
タイプ:みず・あく
特性:げきりゅう・へんげんじざい
第7世代環境の使用率上位の常連であったゲッコウガである。
高速・中火力・紙耐久という、非常によく似た種族値に加え、特性の効果までもが酷似している。「かつての猛者と同じ風格」というだけでエースバーンは既に少年漫画の主人公のごとき強者感を醸しているが、実際その通りで、前述したようなゲッコウガの強みとよく似た、「とにかくタイプ一致で攻撃して火力を出す」という立ち回りを得意とし、解禁された数時間後にはエースバーンの15%は「リベロ」の個体になり、また更に一夜明ければその割合は65%を超え、今やその割合は90%を超え、「エースバーンを見たら『リベロ』と思え」と言って差し支えない環境になった上に、そもそも全ポケモン中の構築への採用率でも4位に食い込んでいる(2020年6月4日現在)。
もともとの素早さの高さは据え置きで火力を補う手段が与えられたのだから、弱いわけがないのだ!
6月4日現在のエースバーンのトレンド
*以下はすべてポケモンHOMEのバトルデータを参照した。
①一緒にバトルチームに入れられているポケモンランキング
1.ドラパルト
2.ミミッキュ
3.ドリュウズ
4.トゲキッス
5.ウォッシュロトム
6.カビゴン
7.ラプラス
8.カバルドン
9.ギャラドス
10.アシレーヌ
1位から7位については、あまりにも全体での採用率が高すぎるため、中堅以上のポケモンの統計ではほとんど彼らがランクインする(要するにほとんどのパーティに入っている)傾向にあるため、エースバーンと相性云々とは別の基準で語る必要があるが、8位以下についてはエースバーンとの補完が大きく関わった統計になっているように思う。
というのも、以下のような現象が起こっていると考えられるためである。
1⃣「リベロ」エースバーンを対策する上で、「素の炎タイプに強い水タイプなどで 殴って倒す」や「物理耐久に自信があり、『ステルスロック』などによる削りと並行した流し」という手段は非常に有効であるため、カバルドンやギャラドス、アシレーヌなどが構築に採用される。
2⃣カバルドンと水タイプの並びを作ると、「リベロ」エースバーンと同時に解禁された「グラスメイカー」ゴリランダー(をはじめとする草タイプ)が重くなる。
3⃣草タイプを上から焼いて倒すのには炎タイプが有効であるため、この補完にエースバーンを採用する。
要するに、「エースバーン取りがエースバーンを使う」と言わんばかりの構築が為されている可能性が指摘できる。
実際に筆者も「カバノラゴンバーン」と称し、「流し役のカバルドン・水アタッカーのウオノラゴン・草対策のエースバーン」の並びから今シーズンの構築を練り始めていた。
②バトルチームの中で採用されている技
1.かえんボール(88.5%)
2.とびひざげり(80.2%)
3.ふいうち(77.4%)
4.とびはねる(61.5%)
5.アイアンヘッド(30.6%)
6.とんぼがえり(13.3%)
7.ビルドアップ(7.4%)
8.しねんのずつき(6.6%)
9.ダストシュート(6.2%)
10.エレキボール(5.6%)
「威力が高く、弱点を突ける範囲が広く、非接触の物理技という個性を持ち、更に追加効果で火傷を狙える」という優秀な個性尽くしの「かえんボール」
「威力が高く、岩・悪などに刺さり、バンギラス・サザンドラなど優秀なポケモンに高い打点を持てる」という「とびひざげり」
「比較的威力の高い先制技」である「ふいうち」
メインウェポンとして、これらをほとんどの個体が採用していることが分かる。
「タイプ一致ダイジェットにより、抜き性能を高めつつ飛行タイプの十分な火力を出す」ことを目的とした「とびはねる」
「環境上位のポケモンであるミミッキュの弱点を突くことができ、ダイスチルによる耐久上昇で多少場持ちをよくさせる」ことができる「アイアンヘッド」
「攻撃しながら交代することで、倒せない相手との対面から離脱し、サイクルを有利に進める」ことができる「とんぼがえり」
「攻撃・防御を高めることで、抜き性能と場持ちしやすさを高める」ための「ビルドアップ」
「ダイサイコによりサイコフィールドを展開し、相手の先制技を封じることで高い素早さをより有効に使う」ための「しねんのずつき」
「範囲こそ狭いものの、アシレーヌなどに対して高い火力を出すことができる役割破壊技」としての「ダストシュート」
「ギャラドスを対面から処理し盤面を有利に保つほか、ダイサンダーによりエレキフィールドを展開することで催眠などに強くできる役割破壊技」としての「エレキボール」
サブウェポン・役割破壊技・積み技としてはこういった技が採用されている。
このラインナップを見て分かる通り、非常に技の範囲が広く、出せる火力も高い上に、技候補があまりに多いため型を見極めるのが容易ではない。
上位10位には入っていいないものの、優先度2の先制技である2「フェイント」も覚えられるため、「タスキで耐えて先制技でなんとかする」といった戦術で対処するのが難しいのも難点であろう。
全体的にダイマックスを前提とした技採用が多いため、逆に言えばドヒドイデなどの耐久に自信のあるポケモンで攻撃を受けつつ「くろいきり」などを使えば、相手の体勢を崩すこと自体は可能に見える。しかし、ダイマックスを抜きにしても素で十分な性能を持つポケモンであるため、それで対策ができているとは決して言えない。
③バトルチームの中で採用されている道具
1.いのちのたま(63.7%)
2.きあいのタスキ(10.7%)
3.ラムのみ(5.6%)
4.たつじんのおび(5.6%)
5.こだわりスカーフ(4.8%)
6.こだわりハチマキ(3.5%)
7.チイラのみ(2.0%)
8.とつげきチョッキ(0.8%)
9.じゃくてんほけん(0.6%)
10.こうかくレンズ(0.6%)
前述した技のラインナップを見るとわかるように、「ダイマックスを前提とした構成」が多いポケモンであるため、「こだわり」系アイテムよりは「いのちのたま・たつじんのおび」による火力強化が為されている個体が多いようだが、「唯一の弱点と言ってもよい紙耐久を補う」ための「きあいのタスキ」、「高い素早さを麻痺によってつぶされたり、『あくび』などによって流されるのを防ぐ」ための「ラムのみ」採用も少なくない。一方でダイマックス前後に「こだわりハチマキ」で高火力で押していく型や、「こだわりスカーフ」で素早さをさらに高めていくことで、多少の素早さ上昇や相手の「こだわりスカーフ」持ちに対処する型も存在する。
エースバーンの育成
エースバーンの性格・努力値振りについては、
1⃣高い素早さにより、相手のポケモンの上をとって攻撃していく
2⃣高速アタッカーとして立ち回る以上、攻撃はできるだけ削らずに済ませたい
3⃣「エレキボール」を採用しない場合、両刀型にする必要はない
4⃣耐久についてはそれほど優先度の高いことはないが、仮想敵如何で調整の余地あり
以上を踏まえて考えればよいだろう。
素早さのラインとしては、
119族:エースバーン
118族:ルチャブル
117族:エンニュート
116族:エルフーン
114族:ココロモリ
110族:ユキメノコ、エーフィ、ゲンガー、Aダグトリオ、Aライチュウ、ライチュウ
108族:デンチュラ
106族:レパルダス
このあたりから決めれば無難だろうが、少なくとも全体での採用率の高いアイアント(39位)は抜いておきたい。また、アイアントと比べると少し数は減るが、ルチャブル(56位)も意識するに足る存在と言えるかもしれない。
よって、少なくとも109族抜き以上の素早さを確保し、他に努力値を割きたい箇所が無ければ118族抜きつまり最速でいいと考えられる。
ただし、こういったラインの仮想敵を切って敢えて100族抜き程度まで素早さを落とすことで、十分な火力を持った両刀振りを実現する方針にも一考の余地があるだろう。
その両刀についてだが、「エレキボール」を元とする「ダイサンダー」は性格補正なしの特攻に156振りすることで「『いのちのたま』込みで無振りダイマックスギャラドスを確定1発」にする程度の火力が実現できる。
耐久調整について、例えばHPに20振りすることで「ダイマックス時に性格補正なし特攻252振りトゲキッスの『ダイジェット(元:エアスラッシュ)』を確定耐え」することができる(尚、実数値が偶数になっていしまうので28振りすると、HPが10n-1になる)。この程度であれば削ることになる火力は微々たるものであるので、持ち物や技と相談しつつ検討してもいいかもしれない。
「きあいのタスキ」採用であれば素直に「ようき:攻撃252振り・素早さ252振り」が安パイであろうし、「たつじんのおび・いのちのたま」採用などであれば前述したトゲキッスの攻撃を耐えるため、「ようき:HP28振り・攻撃252振り・素早さ228振り」などでいいだろう。
もちろんこれは一例に過ぎず、育成は実際には搭載する技や今後移ろう環境に応じて柔軟に考察するべきである。